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税金・社会保険料が払えないとき
|猶予制度の期限と手続き

企経 企業経財 編集部 公開 2026.09.07 更新 2026.08.06 読了 約8分
目次
  1. 放置と相談では、支払う金額そのものが変わる
  2. 国税の猶予は、二種類ある
  3. 「納期限から6か月」という締切
  4. 出す書類と、担保が要らない場合
  5. 地方税と社会保険料は、別々に申請する
  6. 猶予が取り消されるとき
  7. まとめ

資金繰りが厳しくなると、税金や社会保険料の支払いが後回しになります。取引先への支払いを止めれば商売が止まりますが、税金は今日止めても明日は何も起きない。だから後回しになる——その判断そのものは、多くの経営者が通る道です。

ただ、この領域には「相談する」と「放置する」で、支払う金額も残される時間もはっきり変わる仕組みがあります。しかも、その仕組みには条文と申請期限があります。この記事では、感覚論ではなく、期限と数字と条文で整理します。

放置と相談では、支払う金額そのものが変わる

まず、放置した場合に何が積み上がるのかを金額で見ます。国税を納期限までに納めなかった場合、本税とは別に延滞税がかかります。令和8年の割合は次のとおりです。

令和8年の延滞税の割合(国税)
納期限の翌日から2か月以内年2.8%
2か月を経過した日以後年9.1%
猶予が認められている期間年1.3%
延滞税の割合は各年の基準割引率等に応じて変動します。最新の率は国税庁の公表値をご確認ください。

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。2か月を過ぎて放置すれば年9.1%、猶予が認められていれば年1.3%。同じ滞納額でも、年率でおよそ7.8ポイントの差がつきます。500万円を1年持ち越したとすれば、差額はおよそ39万円です。

そして猶予中は、原則として財産の差押えや、すでに差し押さえられた財産の換価(売却して税に充てること)が行われません。金額の負担と、事業を続けられるかどうかの両方が変わる。これが「早く相談したほうがいい」と言われることの、具体的な中身です。

国税の猶予は、二種類ある

ひとくちに猶予といっても、根拠となる条文が違う二つの制度があります。どちらを使うかで、期限も要件も変わります。

1

換価の猶予(国税徴収法第151条の2)

納税について誠実な意思を有し、一時に納付することで事業の継続または生活の維持が困難になるおそれがある場合に、申請によって認められます。納付できないこと自体に特別な事情は要りません。資金繰りが苦しいという通常の事情で申請できるのが、この制度です。多くの中小企業が実際に使うのはこちらです。

2

納税の猶予(国税通則法第46条)

災害・盗難、本人や家族の病気、事業の廃止や休止、事業に著しい損失を受けたこと、といった特定の事由に当てはまる場合の制度です。同条第2項に五つの事由が列挙されており、これらは納期限を過ぎたあとでも申請できます。一方、第3項の場合は納期限までに申請する必要があります。

どちらの制度でも、猶予期間は1年以内が原則で、期間内に完納できないやむを得ない理由があるときは延長でき、当初の期間と合わせて最長2年です。そして猶予期間中は、原則として各月に分割して納付していく形になります。

ポイント:猶予は「待ってもらう」制度ではなく、「分けて納める計画を認めてもらう」制度です。申請の時点で、いつからいくらずつ納めるのかを自分の側から出すことになります。ここが用意できていないと、窓口へ行っても話が進みません。

「納期限から6か月」という締切

換価の猶予でもっとも見落とされやすいのが、申請の期限です。納期限から6か月以内に申請する必要があります。

この6か月を過ぎると、申請による換価の猶予は使えません。残るのは税務署長の職権による換価の猶予ですが、これは申請できる権利ではなく、あくまで職権判断です。自分から動いて確実に土俵に乗せられる期間は、納期限の翌日から数えて6か月しかないということになります。

督促状が届いてから考え始めると、この6か月のうちかなりの部分をすでに使っています。封筒を開けずに置いておく期間が、そのまま選択肢を削っていく——これは気持ちの問題ではなく、日数の問題です。

なお、猶予を申請するにはその税目以外に滞納がないことが前提になります。複数の税目で止まっている場合は、どれを先に整理するかから相談することになります。

出す書類と、担保が要らない場合

申請書のほかに、財産と収支の状況を示す書類を添えます。猶予を受けようとする金額によって、出すものが変わります。

猶予申請に添える書類(国税)
100万円以下財産収支状況書。財産の状況と、当面の収入・支出の見込みを1枚にまとめた様式です。
100万円超財産目録と、収支の明細書。財産の内訳と、月ごとの入出金の見込みをそれぞれ出します。
様式は国税庁のサイトで公開されています。書式が決まっているぶん、何を書けばよいかは明確です。

担保についても、要らない場合が決まっています。猶予する金額が100万円以下のとき、猶予期間が3か月以内のとき、または担保を提供することができない特別の事情があるときは、担保は不要とされています。「担保がないから申請できない」と最初から諦める必要はありません。

実務上いちばん時間がかかるのは、収支の明細書です。ここには今後どの月にいくら入り、いくら出ていくのかを書きます。つまり、資金繰り表がある会社は、ほぼそのまま転記できます。日ごろ資金繰り表を作っていない会社ほど、この段階で止まります。

地方税と社会保険料は、別々に申請する

国税で猶予が認められても、それは地方税や社会保険料には及びません。窓口ごとに、別の申請が必要です。

窓口と根拠
国税所轄の税務署。換価の猶予は国税徴収法第151条の2、納税の猶予は国税通則法第46条。
地方税都道府県税事務所・市区町村の税務担当窓口。徴収猶予は地方税法第15条、換価の猶予は第15条の6(職権)と第15条の6の2(申請)。
社会保険料年金事務所。日本年金機構が換価の猶予の取扱いを設けており、こちらも納期限から6か月以内の申請です。
地方税の運用は自治体ごとに異なる部分があります。具体的な手続きは各窓口にご確認ください。

社会保険料の延滞金は、国税の延滞税と区切りが違います。納期限の翌日から3か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%という形で、国税の「2か月」と1か月ずれています。猶予が認められた期間については延滞金の一部が免除される取扱いがありますが、免除の率は公表されていないため、窓口での確認が必要です。

三つの窓口を同時に回るのは負担が大きいので、金額の大きいものと、6か月の期限が先に来るものから順に着手するのが現実的です。どれも同じ「収支の見込み」を求められるので、資料は一度作れば使い回せます。

猶予が取り消されるとき

猶予は、認められた時点で終わりではありません。国税通則法第49条に、取り消される場合が定められています。おおよそ次の六つです。

実務でいちばん多いのは、二番目と五番目です。分割の1回を落とすこと、そして猶予中に別の税目で新たに滞納すること。どちらも、猶予期間中に資金繰りが再び詰まったときに起こります。

だからこそ、申請時に出す分割額は「頑張れば払える額」ではなく、確実に払い続けられる額で組む必要があります。短く終わらせようとして毎月の額を大きくし、途中で落として取り消されるより、期間を長めに取って完走するほうが結果的に早く終わります。事情が変わりそうなら、落とす前に窓口へ連絡する。ここも、放置がいちばん不利になる場面です。

まとめ

猶予は、頭を下げて待ってもらう手続きではなく、納付の計画を出して認めてもらう手続きです。求められるのは謝罪ではなく、資金繰り表です。まずは納期限がいつだったかを確認し、そこから6か月のどのあたりに今いるのかを数えるところから始めてください。

編集後記

税金や社会保険について納付ができないという会社は実際多く存在する。
現状を理解して、早め早めに相談することが重要です。後回しの対応にしていると本来できる対応が取れなくなることがほとんどです。
〇月〇日までに納付しないと差押を行いますといわれてからの動き出しでは身動きが取れなくなります。
各所相談窓口はあるので、前もって理由と納付計画をしっかり説明することが大切です。

— 編集部
窓口へ行く前の資料の整理から、ご一緒に進めます。
本記事は「企業経財」(運営:ネイビーパートナーズ株式会社)がお届けしています。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、猶予・分割の適用や結果を保証・推奨するものではありません。各制度の要件・手続き・期限は変更される場合があり、適用の可否は個別の状況により異なります。延滞税・延滞金の割合は各年で変動します。必ず所轄の税務署・自治体・年金事務所等の公式窓口や、税理士等の専門家に最新の情報をご確認ください。
【参考】国税徴収法第151条の2、国税通則法第46条・第49条、地方税法第15条・第15条の6・第15条の6の2、国税庁「延滞税の割合」、日本年金機構「換価の猶予」