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取引先が倒れたとき
|共済で借りられる額と、対象にならない倒産

企経 企業経財 編集部 公開 2026.09.11 更新 2026.08.06 読了 約8分
目次
  1. 効いてくるのは、損失ではなく入金予定の穴
  2. 連絡を受けた日に動くこと
  3. 借りられる額は、二つの数字の小さいほう
  4. 無利子の代わりに、掛金が1割減る
  5. 「倒産」と認められる事由は限定されている
  6. 解約して入り直すと、2年間は損金にできない
  7. まとめ

取引先の倒産の連絡は、たいてい突然に届きます。そして最初に頭に浮かぶのは「今月末に入るはずだったあの入金はどうなるのか」です。

連鎖倒産という言葉は物々しく聞こえますが、起きていることは単純です。入るはずのお金が入らず、自社の支払いだけは予定どおり出ていく。備えとして名前が挙がるのが経営セーフティ共済ですが、この制度は加入していれば必ず使えるというものではありません。相手の倒れ方によっては対象外になり、借りられる額にも計算式があります。この記事では、そこを数字と要件で整理します。

効いてくるのは、損失ではなく入金予定の穴

回収できなくなった売掛金は、そのまま損失になります。ただし、実際に会社を止めるのは損失の額ではなく、資金繰りのほうです。

売上の一定割合を一社に頼っている場合、その一社が止まると翌月からの入金予定が大きく欠けます。しかも、こちらの支払いは止まりません。その取引先向けに仕入れた材料の代金、外注に出した分、そして人件費は、予定どおり出ていきます。入りだけが消えて、出はそのまま。これが連鎖倒産の正体です。

倒産件数そのものは増加傾向にあります。東京商工リサーチの集計では、2026年上半期の企業倒産は5,346件、前年同期比で7.1%の増加とされています。なお、そのうち何件が連鎖によるものかを示す全国ベースの公表統計は見当たりません。取引先が倒れたときに自社がどうなるかは、統計ではなく自社の集中度から見積もるしかない、ということでもあります。

連絡を受けた日に動くこと

1

納品と出荷を止める

回収できない相手に、これ以上納めても損失が増えるだけです。連絡を受けたら、まず出荷と作業を止めます。判断が早いほど傷は浅くなります。

2

債権額と証拠書類をまとめる

契約書、注文書、納品書、請求書。いくらの債権があり、それを裏づける書類がどこにあるかを一覧にします。共済の共済金貸付けを申し込む際にも、法的手続きが始まったときにも、そのまま必要になります。

3

相手の「倒れ方」を確認する

法的整理なのか、手形の不渡りなのか、弁護士から通知が来たのか、それとも連絡が取れなくなっただけなのか。この違いが、共済を使えるかどうかを分けます(詳しくは後述します)。

4

資金繰り表を引き直し、金融機関へ先に伝える

その入金を消したうえで、3か月先までの残高を引き直します。不足がいつ・いくら出るのかが分かって初めて、相談の内容が決まります。あとから発覚するより、自分から先に伝えるほうが対応の幅が広がります。

ポイント:この四つのうち、いちばん後回しにされやすいのが四番目です。ところが資金繰り表を引き直さないと「いくら足りないのか」が言えず、金融機関にも支援機関にも相談ができません。数字が先、相談は後です。

借りられる額は、二つの数字の小さいほう

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、毎月掛金を積み立てておき、取引先が倒産したときに無担保・無保証人で共済金の貸付けを受けられる制度です。掛金は月額5,000円から200,000円までの範囲で選び、掛金の総額は800万円が上限です。

肝心の借りられる額は、次のように決まります。

共済金の貸付額
回収が困難となった売掛金債権等の額実際に回収できなくなった金額そのもの。
掛金総額の10倍(最高8,000万円)800万円まで積んでいれば8,000万円。積立が200万円なら2,000万円までです。
実際に借りられる額上のいずれか少ないほうの額。積立が薄ければ、被害額が大きくても上限に頭を打ちます。
制度の詳細・最新の条件は中小企業基盤整備機構の案内をご確認ください。

ここで確認しておきたいのは、月額いくらで入るかが、そのまま使える上限を決めるということです。月5,000円で始めると、掛金総額が200万円に届くまでおよそ33年かかります。備えとしての意味を持たせたいなら、主要な取引先1社あたりの月間の売掛残高を見て、その10分の1程度の積立に何年で到達するかを逆算しておくことになります。

返済期間は、借入額に応じて5年・6年・7年に分かれ、それぞれ54回・66回・78回の均等償還です。この回数には6か月の据置期間が含まれます。連絡を受けてから半年は元金の返済が始まらない、という設計になっています。

なお、取引先が倒産していなくても使える一時貸付金という別の枠もあります。こちらは年0.9%の利息付きで、上限760万円、期間1年。倒産という事由がなくても、積み立てた掛金を担保に短期の資金を引き出せる仕組みです。

無利子の代わりに、掛金が1割減る

共済金の貸付けは無利子です。ただし、無条件というわけではありません。借入額の10分の1に相当する額が、掛金総額から控除されます。

たとえば掛金を800万円まで積んだ会社が、2,000万円の共済金貸付けを受けたとします。このとき、2,000万円の10分の1にあたる200万円が掛金総額から差し引かれ、掛金総額は600万円に減ります。無利子であることの実質的な対価が、ここにあります。

この控除は、次の備えにも影響します。掛金総額が600万円に減れば、次に使える貸付枠の上限も6,000万円に下がります。一度使うと、備えそのものが目減りする——この点は、加入時に理解しておく必要があります。

制度の利用規模としては、加入者は約66万者、共済金の貸付けは累計で約27万件・約1兆9,000億円という水準です。実際に使われている制度ではありますが、上の仕組みを踏まえると、「入っているから大丈夫」ではなく「いくら積んでいるから、いくらまで」という理解が必要だということが分かります。

「倒産」と認められる事由は限定されている

この制度でもっとも誤解が多いのが、ここです。共済でいう「倒産」は、限定列挙された事由に限られます。おおよそ次の六つです。

そして制度の案内には、「夜逃げ」等は該当しないとはっきり書かれています。中小企業庁の説明でも、いわゆる内整理は対象外とされています。

つまり、連絡が取れなくなった、事務所が空になっていた、という状態では共済金の貸付けは受けられません。四番目の私的整理に当たるかどうかの分かれ目は、債務整理の委任を受けた弁護士等から、正式に支払停止の通知が届いているかどうかです。実務では、この通知の有無を最初に確認することになります。

相手が単に音信不通になった場合、共済は使えず、通常の債権回収と資金繰りの立て直しで対応することになります。備えがあるかどうかと、そのとき使えるかどうかは別の話だということです。

解約して入り直すと、2年間は損金にできない

掛金は、一定の要件のもとで損金または必要経費に算入できます。この節税効果に注目して、40か月以上積んで解約し、また入り直すという使い方が広まった時期がありました。

これについて、令和6年度の税制改正で歯止めがかかっています。令和6年10月1日以後に共済契約を解除した場合、その解除の日から2年を経過する日までに支出する掛金は、損金または必要経費に算入できません(租税特別措置法第28条・第66条の11)。

実務上の意味は明確です。解約と再加入を繰り返す使い方は、2年間の空白を挟むことになったということ。そしてその2年間は、掛金を払っても損金にならないうえ、備えとしての積立も薄いまま、ということでもあります。

この制度は、節税の道具としてではなく取引先が倒れたときの備えとして設計されています。加入や解約を検討するときは、目先の税効果ではなく、主要取引先の集中度と、そこが止まったときに必要な額から考えるのが本筋です。

まとめ

備えは、起きる前にしか用意できません。まずは直近1年の売上を取引先別に並べ、上位1社の割合を出してみてください。そこが3割を超えているなら、その1社が止まった月の資金繰り表を一度引いてみる価値があります。必要な備えの額は、その表のなかに数字として出てきます。

編集後記

共済の相談でいちばん多い勘違いが、「入っているから取引先が倒れても大丈夫」というもの。
実際には、借りられるのは掛金総額の10倍まで。月5,000円で入っていれば、しばらくは数十万円の枠しかない。売掛が1,000万円ある相手に備えたいなら、掛金総額100万円まで積んでおく必要がある——この計算をしている会社は、そう多くない。
それと、相手の倒れ方。破産の申立てや不渡りならはっきりしているが、いちばん困るのが「連絡が取れなくなった」ケースだ。これは制度上の倒産に当たらない。弁護士から支払停止の通知が来ているかどうかを、まず確認することになる。
節税目的で入って40か月で解約、という話も減った。令和6年10月からは解約後2年間の掛金が損金にならない。制度が本来の趣旨に戻された格好で、備えとしてどう使うかを考え直す時期だと思っている。

— 編集部
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の債権回収の結果や制度の適用を保証するものではありません。共済制度の掛金・限度額・要件・税務上の取扱い、および倒産時の法的手続きの取り扱いは、時期・制度・個別の状況により異なり、変更される場合があります。実際のご検討にあたっては、運営機関の最新の案内や、弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。
【参考】独立行政法人中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」、中小企業庁、租税特別措置法第28条・第66条の11、東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」