<p>資金繰りが厳しくなったとき、多くの経営者がまず考えるのが固定費の見直しです。売上を伸ばすのには時間がかかる一方、費用には早期に見直せるものもあります。ただし、契約・法令・事業への影響を確認してから判断します。</p>
<p>ただ、削る順番を間違えると、翌月から売上のほうが先に落ちてしまうことがあります。この記事では、固定費をどう分類し、どこから手をつけるかを整理します。</p>
<h2 id="s1">なぜ「金額の大きい順」に削ると失敗するのか</h2>
<p>試算表を開いて、金額の大きい費用から順に赤ペンを入れていく。いちばんやりがちで、いちばん危ないやり方です。</p>
<p>金額の大きい費用には、<b>会社の売上を支えている費用</b>も含まれるからです。人件費、広告費、主要な仕入先との取引条件。ここを大きく削れば、その月の支出は確かに減ります。しかし翌月以降、受注が細り、対応できる件数が減り、結果として売上のほうが早く落ちていく。<b>削減による節約と、その後の売上への悪影響</b>という、割に合わない交換になりかねません。</p>
<p>見るべきは金額の大小ではなく、<b>その費用が売上にどうつながっているか</b>です。</p>
<h2 id="s2">費用を3つに分けて考える</h2>
<p>固定費は、売上への効き方で3つに分けると判断しやすくなります。</p>
<div class="step"><div class="n">1</div><div>
<h3>売上への影響が小さいと確認できた費用</h3>
<p>使っていないサブスクリプション、実態に合わなくなった保険や保守契約、惰性で続いている会費や広告枠、使われていない倉庫や駐車場。<b>ここが最初に手をつけるべき場所</b>です。ただし、使っていないように見える契約でも、保障や安全のために必要な場合があります。利用実態と解約条件を確認します。</p>
</div></div>
<div class="step"><div class="n">2</div><div>
<h3>止めると、しばらく経ってから効いてくる費用</h3>
<p>採用、教育、システムの更新、設備のメンテナンス、既存顧客へのフォロー。影響が後になって現れることがあります。ただし、保守や安全に関わるものでは、直ちに支障が出る場合もあります。<b>一時的に絞るのは選択肢ですが、「止めた」ことを忘れないこと</b>が大切です。資金繰りが戻ったら戻す、という前提で扱いたい費用です。</p>
</div></div>
<div class="step"><div class="n">3</div><div>
<h3>止めると、短期間で売上に影響し得る費用</h3>
<p>受注に直結している広告、現場を回している人員、主要な外注先。<b>ここは最後です</b>。どうしても手をつける場合は、金額を一律で削るのではなく、成果が出ていない部分を特定して外す、という順序になります。</p>
</div></div>
<div class="callout">ポイント:削減額の合計だけを見て「これだけ減らせた」と評価すると、②と③を削ったときの成果がいちばん大きく見えてしまいます。金額ではなく、分類ごとに見ることが大切です。</div>
<h2 id="s3">見直しの順番</h2>
<p>実際に手を動かすなら、次の順番が現実的です。</p>
<ul>
<li><b>まず棚卸しをする</b>:通帳と口座引き落とし、クレジットカードの明細を12ヶ月分並べ、毎月出ていく固定費をすべて書き出します。「あるはず」ではなく「実際に引き落とされているもの」から拾うのがコツです。</li>
<li><b>①に該当するものから条件を確認して見直す</b>:金額が小さくても数を集めれば効きます。解約費用、必要な保障・保守、安全上の義務、業務への影響を確かめてから判断します。</li>
<li><b>②を「一時的に絞るもの」と「維持するもの」に仕分ける</b>:止めるのではなく、期間を決めて絞る。再開時期をカレンダーに書いておきます。</li>
<li><b>③には最後まで手をつけない</b>:ここに手をつけざるをえない状況なら、費用の問題ではなく資金調達や事業構造の問題として考えたほうが早いことが多くあります。</li>
</ul>
<h2 id="s4">「削る」以外の選択肢もある</h2>
<p>固定費の見直しは、必ずしも「やめる」だけではありません。支払いのタイミングをずらすだけでも、資金繰りの山は低くなります。</p>
<ul>
<li>年払いを月払いに変える(総額はやや増えても、月の資金繰りは平準化されます)</li>
<li>リースやレンタルへの切り替えを検討する</li>
<li>契約の更新月に合わせて、条件を見直す交渉をする</li>
</ul>
<p>「支出を減らす」と「支出のタイミングをずらす」は別の打ち手です。資金繰りが詰まりそうな月がはっきりしているなら、後者のほうが事業への影響なく効くことがあります。</p>
<h2 id="s5">まとめ</h2>
<p>固定費の見直しは、金額の大きい順ではなく、<b>売上への効き方の順</b>で考えます。売上への影響が小さいと確認できた費用から手をつけ、効いてくるのが遅い費用は期間を決めて絞り、売上に直結する費用は最後に回す。削減額だけでなく、契約上の費用と事業への影響を含めて効果を確かめます。</p>
<p>そして、削る前に一度、資金繰り表で「いつ・いくら足りないのか」を確かめること。必要な額がはっきりすれば、削らなくてよい費用まで削らずに済みます。</p>
<h2>確認に用いた一次資料</h2><ul><li><a href="https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/youryou/index.html">中小企業庁「中小会計要領」</a></li></ul><p>情報確認日:2026年10月3日。</p>
コスト削減の話をすると人員削減等をイメージする経営者の方が多くいますが、一概にそうではありません。
まず大切なのは現状の資金繰りを理解し、どのタイミングでいくら足りないのかということを正確に理解することです。
人件費は売上を確保するために必要なものであり、その他にも売上確保に必要な経費は多く存在します。そこを理解し自社の正常収益力を把握し事業計画に落とし込んでいく必要があります。
目先の数字にとらわれず、自社の状況把握を深めていきましょう。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の経営判断の結果を保証するものではありません。契約内容の変更や解約にあたっては、契約条件を必ずご確認ください。