「そろそろプロパーでお願いできませんか」。この切り出し方をする社長は多いのですが、実はこの問いの立て方に、少しずれがあります。
保証付き融資からプロパー融資へ、ある日を境にまとめて切り替わる、ということは起きません。実際に起きるのは、保証付きのなかにプロパーが少しずつ混ざっていくという過程です。そして近年、その混ぜ方そのものを制度が要件にしています。
借入は一本ずつ独立しています。すでに出ている保証付き融資が、途中でプロパーに変わることはありません。変わるとすれば、次に出る一本がどちらになるか、という話です。
だから実務上の問いは「いつ切り替えてもらえるか」ではなく、「次の一本にプロパーを混ぜてもらえるか」になります。金額も、最初から大きくある必要はありません。むしろ小さくてよい、というのが制度の設計にも表れています。
中小企業庁が中小企業政策審議会の金融小委員会に出した資料に、この論点の中心になる数字があります。保証申込時においてプロパー融資残高がなかった保証承諾の割合です。
| 2018年度 | 54.2% |
| 2019年度 | 52.9% |
| 2020年度 | 51.1% |
| 2021年度 | 59.8% |
| 2023年度 | 60.8% |
資料のコメントも率直です。「保証協会への保証申込時点において、既にプロパー融資が入っている先はコロナ禍で1割程度減少。民間ゼロゼロを含むコロナ禍の各種支援により資金需要を満たしたことでプロパー融資が減少」。
そして問題意識も明記されています。
同じ資料では、プロパー融資のみを受けている企業のほうが経営改善の状況が良好で「金融機関による効果的な経営支援がなされている可能性が推察される」という分析も示されています。
制度の側でも、平成30年4月施行の改正により、信用保証協会が業務を行うに際して金融機関と連携を図ること(法20条の2)と、中小企業者に対する助言その他の支援を行うこと(法20条2項1号)が規定されました。金融庁・中小企業庁の「信用保証協会向けの総合的な監督指針」には、監督上の着眼点として「柔軟に保証付き融資とプロパー融資のリスク分担を行っているか」「今後のプロパー融資の実施方針を含めた支援の方向性」という項目が置かれています。
この流れを最も直接的にかたちにしたのが、令和7年3月14日に申込受付が始まった協調支援型特別保証制度です。
| 限度額 | 2億8,000万円(組合等は4億8,000万円)。保証料率は年0.45%〜1.90%の9段階。責任共有制度の対象です。 |
| 要件(選択制) | ①申込金融機関から本制度による保証付き融資の実行と原則同時に、本保証付き融資額の1割以上(融資期間12か月以上)のプロパー融資を受けること、または②金融機関の支援を受けつつ、自ら経営行動計画を策定・実行し進捗を報告すること。 |
| 取扱期間 | 令和7年3月14日から令和10年3月31日まで(保証申込受付分)。 |
読み方が大事なところです。要件①は、事業者の努力目標ではありません。銀行が同時にプロパーを出さなければ、保証が付かないという設計です。保証付き1億円を借りるなら、同じ銀行が1,000万円以上のプロパーを同時に出すことになります。
しかも「融資期間12か月以上」という縛りが付いています。決算をまたがない短期のつなぎで数字だけ合わせることを封じる作りです。
もう一つ、名前からは読みにくい制度があります。プロパー融資借換特別保証制度です。
これはプロパー融資を保証付き融資に借り換える制度で、目的は資金調達ではなく経営者保証の解除です。取扱期間は令和6年3月15日から令和9年3月31日まで、限度額は2億8,000万円、保証料率は0.45%から1.90%。
ただし、その限度額には条件が付いています。
つまり、その銀行が過去に無保証でプロパーを出していなければ、この制度の枠はゼロです。保証協会の制度でありながら、使えるかどうかを決めているのは銀行のプロパー実績、という入れ子の構造になっています。
資格要件は、資産超過であること、EBITDA有利子負債倍率が15倍以内であること、法人・個人の分離がなされていること、申込日において返済緩和している借入金がないことの4つです。EBITDA有利子負債倍率の算式は「(借入金・社債−現預金)÷(営業利益+減価償却費)」。
混ぜていく過程で、もう一つ効いてくるのが情報提供の実績です。
令和6年3月15日に始まった事業者選択型経営者保証非提供制度の要件は、次の三つです。
| 要件1 | 過去2年間(設立から2年経過していない場合はその期間)において、決算書等を申込金融機関の求めに応じて提出していること。 |
| 要件2 | 直近の決算において代表者への貸付金等がなく、役員報酬・賞与・配当等が社会通念上相当と認められる額を超えていないこと。 |
| 要件3 | 直近の決算が債務超過でないこと、または直近2期で減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと。 |
要件1は、財務の良し悪しではありません。情報を出し続けてきた実績が2年分あるかという、過去形の要件です。今日から始めても、効いてくるのは2年後になります。
そして令和8年3月16日に取扱いが始まったモニタリング強化型特別保証制度では、この情報提供が月次になりました。限度額2億8,000万円、保証料率0.45%から1.90%、保証期間は分割返済で10年以内。要件は「認定経営革新等支援機関との連携により、月次で財務状況や資金繰り状況等を把握し、経営状況等の報告を行うことを誓約する中小企業者」です。
この制度には、もう一つプロパー比率が顔を出します。申込金融機関自身が認定経営革新等支援機関である場合、その金融機関のプロパー融資残高が総借入金の50%以上であることが必要とされています。
取扱期間は令和8年3月16日から令和11年3月31日まで。令和8年3月16日から令和9年3月31日までの申込分は、保証料の2分の1を国が補助します。
借入の一本ごとに、保証付きかプロパーか、経営者保証が付いているか、残高と残期間はどうか。この一覧がないと、どの制度の入口に立っているかが判断できません。プロパー融資借換特別保証の枠は、無保証プロパーの残高そのものです。
協調支援型は「保証付き融資額の1割以上」が要件です。額の大きさより、プロパーが一本あるという事実のほうが先に効きます。次の資金需要のときに、この制度が使えるかを聞いてみるのが具体的な一歩です。
過去2年間の決算書提出実績、月次の財務・資金繰りの把握。いずれも「これから始める」では間に合わない要件です。使う予定がなくても、出す相手がいて、出した記録が残る状態を作っておきます。
ローカルベンチマークの4つの視点(経営者/事業/企業を取り巻く環境・関係者/内部管理体制)と6つの財務指標(売上増加率、営業利益率、労働生産性、EBITDA有利子負債倍率、営業運転資本回転期間、自己資本比率)。制度の要件に出てくる指標が、この6つと重なっています。
なお、この分野はまだ動いています。令和8年6月2日の金融小委員会の資料には「責任共有割合を例外的に50%とした新たな制度の創設」の検討が記載されており、混ぜ方の種類はさらに増える方向です。担保の面でも、令和8年5月25日に企業価値担保権が施行されました。
プロパーに切り替わるのを待つ、という構えだと、いつまでも順番が来ません。小さく一本混ぜてもらい、そのあいだ数字を出し続ける。制度が後押ししているのは、その進み方のほうです。
プロパー融資は銀行との信頼関係、つまり過去の返済実績及び財務状況の推移が非常に大切です。
単純に返済実績だけを作るといったよりは、融資の際に何に使うお金なのか、その融資の効果としてどのように売上・利益が変化していくのかを説明して、計画通りに推移したうえでしっかりと返済を行うことが大切です。
月に一度業況報告に訪問する等、金融機関と取引深耕を図っていくことが非常に重要です。
また、本文に記載してある通り、いきなりプロパー融資一本でいくのではなく、保証協会付と協調で融資を行う方法が最近では最もプロパー融資を通すには可能性が高いと感じています。
その他にもまずは短期のプロパー実績を作るなど、方法は様々だと思いますが、大前提は金融機関に対して自社の情報をオープンにしていくことが大切だと思います。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、融資や保証の結果を保証するものではありません。制度の要件・料率・期間は改正されることがあります。実際のご判断は、取引金融機関・所在地の信用保証協会にご確認ください。
【参考】中小企業庁「物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度の取扱いを開始します」(令和7年3月14日)/中小企業庁「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します」(令和6年3月15日)/中小企業庁「モニタリング強化型特別保証制度」(令和8年3月2日)および同 金融課資料/中小企業政策審議会 金融小委員会 事務局説明資料(第12回・第13回・第16回)/金融庁・中小企業庁「信用保証協会向けの総合的な監督指針」(令和6年10月)/金融庁「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(令和元年12月)/経済産業省「ローカルベンチマーク ガイドブック(企業編)」/全国信用保証協会連合会「信用保証実績の推移」/金融庁「事業性融資の推進(企業価値担保権等)」