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M&A・事業承継

後継者がいない|M&Aではなく
「たたむ」という選択

企経 企業経財 編集部 公開 2026.08.28 更新 2026.10.15 読了 約7分
目次
  1. 「たたむ」は、負けではない
  2. まず確かめる三つのこと
  3. 判断を分ける分岐点
  4. 進めるとしたら、どういう順番か
  5. いちばん避けたい終わり方
  6. まとめ

子どもは継ぐ意思がない。社内にも、引き受けられる人がいない。世の中では事業承継やM&Aの話をよく聞くけれど、うちのような規模で、買い手がつくとも思えない。

この状況で、多くの経営者が「たたむ」という選択肢を、口に出さないまま先延ばしにします。負けを認めるようで言いにくい。従業員や取引先の顔が浮かぶ。その気持ちは自然なものです。ただ、先延ばしにするほど選べる手が減っていくのも、また事実です。

「たたむ」は、負けではない

まず、言葉の整理をしておきます。事業をやめる形には、いくつかの段階があります。

資産が負債を上回る状態でやめる会社の財産を換金して、借入や買掛金をすべて支払い、残りを整理して終える形。手元に残る場合もあります
債務が残る状態でやめる支払いきれない部分が残る形。法的な手続きや、金融機関との協議が必要になります
事業の一部だけを譲る会社は残さないが、設備・取引先・従業員などを他社に引き継いでもらう形

一つ目は、自らの判断で区切りをつけるという性質のものです。多くの場合、これは倒産とはまったく違います。取引先への支払いも、従業員への給与も、きちんと済ませたうえで終える形です。

そして、この形を選べるかどうかは時期で決まります。資金が尽きてからでは選べません。まだ動ける段階で判断できるかどうか、という問題です。

ポイント:たたむという判断は、余力があるうちにしかできません。これが、先延ばしがもっとも高くつく理由です。

まず確かめる三つのこと

結論を出す前に、事実として押さえておきたいことがあります。感覚ではなく、資料で確認してください。

1

いま止めたら、何が残るか

会社の資産を換金し、借入・買掛金・未払いの経費・従業員への支払いをすべて済ませたら、手元にいくら残るのか。あるいは、いくら足りないのか。ここが出発点です。おおまかな試算でかまいませんが、必ず数字にしてください。

2

個人保証と、個人名義の資産

会社の借入に個人で保証をしているか。事業に使っている不動産が個人名義になっていないか。ここは、たたむ判断に直接関わる部分です。「経営者保証に関するガイドライン」には、事業をやめる場面での取扱いについての考え方も示されています。

3

本当に、引き継ぐ人がいないのか

親族と社内だけを見て「いない」と判断していないか。取引先、同業他社、長く付き合いのある会社。規模が小さくても、設備や取引先、資格や許認可に価値を見出す相手がいる場合があります。仲介の会社を通さなくても、金融機関や商工団体、事業引継ぎの支援機関に相談する経路があります。

三つ目は、思い込みで判断されやすい部分です。買い手がつかないと決める前に、一度は外に聞いてみる価値があります。聞いたうえでたたむと決めるのと、聞かずに決めるのとでは、あとの納得感が違います。

判断を分ける分岐点

どちらに進むかを考えるとき、材料になる観点をいくつか挙げます。

とくに最後の点は、実務で強く感じる部分です。体調を崩してから決断するという順序になると、選べる形がほとんど残りません。元気なうちに考えておく話です。

進めるとしたら、どういう順番か

たたむ方向で進める場合、順番があります。専門家の関与が前提になりますが、全体像を知っておくと相談がしやすくなります。

1

専門家に相談する

税理士、弁護士に、状況を包み隠さず伝えます。債務の状況によって、必要な手続きも進め方も変わるためです。

2

金融機関に、早めに伝える

返済ができなくなってから伝えるのと、見通しの段階で相談するのとでは、対応がまったく異なります。個人保証がある場合はなおさらです。伝える時期と内容は、専門家と決めてから動いてください。

3

従業員に、順序と時期を決めて伝える

もっとも神経を使う部分です。次の勤め先の目処、退職金や未払いの整理、伝える順番。ここを丁寧にできるかどうかが、たたみ方の質を決めます。時間の余裕がある人ほど、丁寧にできます。

4

取引先に伝え、引き継ぎ先を探す

自社が抜けることで困る取引先があるはずです。可能な範囲で、代わりの取引先を紹介する。これは、最後にできる仕事の一つです。

5

資産を換金し、支払いを済ませる

設備、在庫、不動産。急いで売ると安くなります。時間があるほど、条件は良くなります。

6

手続きを完了させる

解散・清算の登記や税務の届出など、法的な手続きを進めます。ここは専門家の領域です。

全体では、状況によって一年前後、あるいはそれ以上かかることもあります。思い立ってすぐ終わるものではないという前提で、時間を見ておく必要があります。

いちばん避けたい終わり方

実務で見ていて、いちばんつらいのは次のような経過です。判断を先送りしているうちに、資金が尽きる。支払いが止まり、取引先に迷惑がかかる。従業員に、次の準備をする時間を与えられない。個人の資産も、ほとんど残らない。

この経過に共通しているのは、「決められなかった」ことであって、事業の内容そのものではありません。同じ規模、同じ業績でも、早く判断できた会社は、取引先にも従業員にも筋を通して終えています。

先延ばしになりやすい理由も、はっきりしています。相談する相手がいないこと。誰かに話せば現実になってしまう気がすること。この二つです。だからこそ、社外の第三者に一度話してみることに意味があります。話したからといって、決めなければならないわけではありません。

ポイント:まだ決めていない段階で相談することが、いちばん選択肢を残します。

まとめ

続けるか、譲るか、たたむか。どれを選ぶにしても、早い段階で材料をそろえて考え始めた方ほど、納得のいく形にたどり着いています。まだ決めていない段階でこそ、一度、外の目を入れてみてください。

編集後記

経営者として今までやってきたことに区切りをつけて会社を終わらせる決断は非常に重い決断だと思います。
ただたたむといっても様々な手続きが必要になり、簡単にはいきません。自社の資産状況を全て洗い出し、負債の部分を全て解消していく必要があります。
M&Aなんてできないだろうと考えがちな経営者も多いですが、相手側が自社の魅力を新たに見つけ出しクロージングすることもあります。
後継者不在といった内容についても外部から探すこともできるし、すぐには難しいかもしれないが従業員の中に適性のある人材が眠っているかもしれない。
上記のように単純に会社をたたむよりも実際楽で周りにとってもよい状況を残せる可能性があるのがM&Aでもあるので専門家にまずは相談してみることが良いと思います。

— 編集部
続けるか、譲るか、たたむか。順番から一緒に整理します。
本記事は「企業経財」(運営:ネイビーパートナーズ株式会社)がお届けしています。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の選択を推奨するものではなく、結果を保証するものでもありません。会社の解散・清算、事業譲渡、経営者保証の取扱い、税務上の影響は、個別の状況・時期・契約内容によって大きく異なります。実際のご検討にあたっては、弁護士、税理士、取引金融機関など、専門家に必ずご相談ください。