「保証協会の枠がいっぱいです」。この一言で、追加の融資が止まってしまうことがあります。
ただ、この言葉は二つのまったく違うことを指している場合があります。ひとつは法律で決まっている限度額に達しているという意味。もうひとつは限度額には余裕があるが、審査で承諾できないという意味です。どちらなのかで、次に打てる手はまるで変わります。
まず、法律上の限度額を確かめます。根拠は中小企業信用保険法です。
| 普通保険 | 第3条1項。中小企業者一人につき2億円(協同組合等は4億円)。てん補率70%。 |
| 無担保保険 | 第3条の2第1項。8,000万円。てん補率80%。 |
| 特別小口保険 | 第3条の3。小規模企業者一人につき2,000万円。担保も保証人も提供させないもの。 |
特別小口保険には追加の要件があります。施行規則5条により、申込日以前1年以上引き続き同一の都道府県内で同一の業種の事業を行っていること、そして申込日前1年間に納期が到来した所得税・法人税・事業税・住民税のいずれかについて納付実績があり、かつ当該税額を完納していること。企業規模は従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)です。
もうひとつ、限度額以前の入口の条件も押さえておきます。全国信用保証協会連合会が公表している利用条件では、農業、林業(素材生産業を除く)、漁業、金融・保険業は対象外とされ、保証の対象になる資金は「事業経営に必要な資金(運転資金および設備資金)に限られています」。
一般保証とは別枠で使える制度があります。代表がセーフティネット保証です。
| セーフティネット保証 | 1号から8号まで。一般保証とは別枠で同額(6号のみ普通保証3億円)。4号は最近1か月の売上高等が前年同月比20%以上減少、5号は最近3か月が前年同期比5%以上減少が要件です。 |
| 危機関連保証 | 一般枠・セーフティネット枠とはさらに別枠。ただし2026年8月時点では未発動で、中小企業庁のページに「現在の認定案件はございません」と記載されています。 |
| 復興緊急保証 | 東日本大震災復興緊急保証。別枠2億8,000万円で、取扱期限は令和9年3月31日の融資実行分まで。対象地域なら合算で最大5億6,000万円になります。 |
| 経営改善サポート | 限度額2億8,000万円で、一般の普通・無担保保証とは別枠と明記されています。保証料率0.4%、取扱期限は令和9年3月31日まで。 |
ここで大事な事実があります。別枠は無限には積み上がりません。日本政策金融公庫が引き受ける保険の側に、合算の上限が置かれています。
経営安定関連特例分(セーフティネット保証)は、一般分と合算して普通4億円(組合8億円)、無担保1億6,000万円、特別小口4,000万円が上限です。つまり一般で2億8,000万円を使い切っていれば、セーフティネットで積める額もそこまで、ということになります。
創業関連保証にも同じ構造があります。限度額は3,500万円ですが、保険の条件表には「一般分と合わせて8,000万円以下」という但し書きが付いています。既に無担保保証を6,000万円使っていれば、創業関連で使えるのは3,500万円ではなく2,000万円です。
もうひとつ、よくある誤解を解いておきます。「セーフティネット保証なら100%保証」というものです。
全国信用保証協会連合会が公表している「責任共有制度の対象外となる保証」は13制度あります。
| セーフティネット | 経営安定関連保証のうち1号から4号、および6号。5号・7号・8号は責任共有の対象です。 |
| 創業・小規模 | 創業関連保証(再挑戦支援保証、スタートアップ創出促進保証制度を含む)、特別小口保険に係る保証、小口零細企業保証。 |
| 再生・その他 | 災害関係保証、事業再生保証、求償権消滅保証、中堅企業特別保証、東日本大震災復興緊急保証、事業再生計画実施関連保証(通常型・経営改善再生支援強化型)、危機関連保証、伴走支援型特別保証制度。 |
この違いは、金融機関がどれだけリスクを負うかの違いです。100%保証なら銀行のリスクはゼロ、80%なら2割を銀行が負う。同じ会社でも、どの制度で申し込むかで話の通り方が変わります。
「借換保証で枠を空けられないか」という相談があります。ここは、保証協会自身が公表している事例が答えになっています。
大阪信用保証協会が示している例では、残高1,000万円と600万円の2本を1,600万円で一本化しています。合計残高は1円も減っていません。
あわせて注意点も公表されています。保証料の補給制度がある保証(いわゆるゼロゼロ保証など)から補給のない保証へ借り換える場合、補給は新規借入に引き継がれません。
名前が紛らわしい制度についても触れておきます。プロパー融資借換特別保証制度は、名称から「保証付きをプロパーに」と読まれがちですが、実際は逆で、プロパー融資を保証付き融資に借り換える制度です。目的は資金調達ではなく経営者保証の解除で、金融機関は保証付き融資の実行と同時に経営者保証を解除するか、保全なしの新規プロパー融資を提供することになります。枠を空けたい場面では、方向が逆になります。
枠を空ける方向で確実なのは、繰上返済です。保証付き融資を返せば、その分だけ限度額に余裕が生まれます。無担保保険について「八千万円から当該保険関係における保険価額の合計額を控除した残額」と条文が書いているのが、その構造的な根拠です。
もうひとつ、プロパーを混ぜていく方向の制度もあります。協調支援型特別保証制度は、保証付き融資額の1割以上(融資期間12か月以上)のプロパー融資を原則同時に受けることを要件の一つとしています。保証料の国補助は2026年4月1日から2027年3月31日までが3分の1相当、その後は4分の1相当と、年ごとに薄くなる設計です。
信用保証協会の枠とは無関係に使える手も、あわせて並べておきます。
| 公庫の融資 | 日本政策金融公庫は保証協会の保証を使わない直接貸付なので、枠を消費しません。 |
| 資本性ローン | 挑戦支援資本強化特別貸付。限度額7,200万円の別枠、期間5年1か月以上20年以内、返済は期限一括で、それまでは利息のみ。償還期限まで5年以上の債務は残高の100%が金融機関の資産査定上の自己資本とみなせます。 |
| 企業価値担保権 | 事業性融資の推進等に関する法律により、令和8年5月25日に施行されました。企業の総財産を担保にできる仕組みで、不動産担保や経営者保証に過度に依存しない融資を促す制度です。 |
| ABL・社債 | 流動資産担保融資保証(限度額2億円、80%保証、保証人不要)、特定社債保証(4億5,000万円)。 |
統計も置いておきます。令和7年度末の信用保証協会の保証債務残高は2,883,254件・32兆9,005億円。利用企業は中小企業・小規模事業者のうち145万先(43%)です。令和7年度の利用状況を見ると、資金使途は運転資金92.0%・設備資金8.0%、金融機関群別では信用金庫44.4%、地方銀行32.6%、第二地方銀行14.3%、都市銀行4.1%となっています。
枠が詰まったときに、いちばん避けたいのは急いで高い資金に手を出すことです。金融庁が注意喚起している内容を、そのまま置いておきます。
| 徴表1 | 債権額に比べて、受け取る金銭が著しく低額である。 |
| 徴表2 | 売主が債権を買い戻す必要がある。 |
| 徴表3 | 売掛先から回収できない場合に、売主が支払う義務を負う。 |
金融庁は、給与ファクタリングについても「業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します」と明言しています。相談窓口は金融庁相談室(0570-016811)と警察(#9110)です。
順番としては、まず取引金融機関と保証協会に「いま何が理由で止まっているのか」を聞くこと。限度額なのか審査なのかが分かれば、別枠を探すのか、財務と説明資料を作り直すのかが決まります。
「枠がいっぱい」は、終わりの言葉ではありません。何の枠が、いくらまで、どこで止まっているのか。まずそこを聞き取るところから、次の手が決まります。
保証枠がいっぱいといわれた時の状況を細かく整理しましょう。
まず保証協会に事前相談を出して枠がいっぱいといわれたのか、もしくは金融機関の担当から枠がいっぱいでしたと言われたのかです。
金融機関の担当から言われた場合は審査の面でダメと言われている場合も多くあります。その場合は自身で直接保証協会の窓口に行ってしっかりとした事業計画や今後の方針を説明していくことで融資の可能性は出てくることもあります。
ただ、最終的に融資の判断をするのは金融機関であるため、同時に金融機関に対しても同様の対応をしていく必要があります。
単純に決算書や試算表のみを提出して融資申込をしても金融機関として将来的な返済実現性や会社の成長性を判断することは非常に困難です。
なので日ごろから金融機関の担当者には自社の現状と中長期の事業計画を説明し、進捗の共有をしていくことが非常に大切になってきます。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、保証の承諾や融資の結果を保証するものではありません。制度の内容・限度額・指定期間は改正されることがあります。実際のご判断は、取引金融機関・所在地の信用保証協会にご確認ください。
【参考】e-Gov法令検索「中小企業信用保険法」第3条・第3条の2・第3条の3/同施行規則第5条/全国信用保証協会連合会「ご利用条件」「信用保証制度を支えるしくみ」「さまざまな保証制度」「東日本大震災に関連する保証制度」「信用保証実績の推移」「令和7年度 信用保証利用状況」/中小企業庁「セーフティネット保証制度」(概要・1号・4号・5号)「危機関連保証制度」「経営改善サポート保証」「協調支援型特別保証制度」「モニタリング強化型特別保証制度」「スタートアップ創出促進保証」/日本政策金融公庫「中小企業信用保険制度の概要」(令和8年1月1日現在)「信用保険業務」「挑戦支援資本強化特別貸付」/大阪信用保証協会「借換」/千葉県信用保証協会「プロパー融資借換特別保証制度」/金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」「ヤミ金融対策法のポイント」/金融庁「事業性融資の推進(企業価値担保権等)」