借入をしてしばらく経ったころ、担当者から「そろそろ試算表をいただけますか」と言われる。決算書はきちんと出しているのに、なぜ期の途中の数字まで求められるのか。しかも、今は正直あまり見せたくない数字が並んでいる。そんな場面は、めずらしくありません。
この記事では、出す義務があるのかという契約の話と、断ったときに実際に何が起きるのかという実務の話を、はっきり分けて整理します。この二つは性質がまったく違うのに、まとめて語られがちな部分です。
試算表を求められる場面には、いくつかの型があります。まず、どれに当たるのかを見分けておくと、身構えすぎずに済みます。
経営者の側は、四つ目を真っ先に思い浮かべてしまいがちです。けれども実際には、一つ目から三つ目のほうが多く、単に手続き上の依頼であることも少なくありません。まず「どういう文脈での依頼ですか」と聞いてしまうのが、いちばん早い確認方法です。聞いたからといって、印象が悪くなる性質のものではありません。
提出義務があるかどうかは、感覚ではなく契約書に書いてあるかどうかで決まります。確認すべき書類は、だいたい次のあたりです。
金融機関との取引全体の土台になる書面です。財産や経営の状況について、報告を求められたときに応じる旨の条項が置かれていることがあります。
その借入ごとの契約書です。提出する書類の種類と時期が、具体的に書かれている場合があります。
財務の内容に関する取り決めがある場合、決算書だけでなく期中の資料の提出が定められていることがあります。
条項がある場合、提出は約束したことになります。条項がない場合は、あくまで依頼です。ただし、次に述べるとおり、依頼だから断って構わないという単純な話にはなりません。
契約に書かれていなければ、法的に応じる義務があるとは言い切れません。しかし融資の取引は、契約書の条文だけで動いているわけではありません。金融機関の側から見ると、資料の提出を渋る会社は「見せられない事情があるのではないか」という前提で見られる方向に傾きます。
実務でよく起きるのは、次のような流れです。断ったこと自体が問題になるというより、断ったあとに情報がない状態が続くことで、判断が慎重な方向へ寄っていきます。
逆に言えば、出しにくい数字であっても、説明とセットで出したほうが結果的に扱いやすいということでもあります。数字が悪いこと自体より、状況が見えないことのほうが、相手にとっては判断しづらいためです。
提出をためらう理由の多くは、手続きへの抵抗ではなく、中身にあります。赤字が出ている、在庫が積み上がっている、役員貸付金が増えている。そうした状況で、そのまま出すのはこわい、という感覚は自然なものです。
ただ、この場面で選べる道は「出す」か「出さない」かの二つだけではありません。出し方を整えるという三つ目があります。
試算表の数字そのものを操作するのは、絶対に避けるべきことです。そうではなく、その数字になった理由と時期を、別紙の短いメモで添えます。一時的な要因なのか、続いている傾向なのかが分かるだけで、受け取り方は変わります。
現時点の数字が悪くても、今後の受注や入金の予定があるなら、それも一緒に伝えます。過去だけを見せると、過去だけで判断されます。
経費の見直し、条件の交渉、回収の前倒しなど、すでに動かしていることがあれば添えます。何もしていないように見えることが、いちばん心配される点です。
試算表だけを黙って渡すのは、もったいない使い方です。同じ手間なら、こちらの説明が届く形にしておいたほうが得です。目安として、次のようなものが考えられます。
| 直近の残高 | 試算表の締め日以降に大きな入出金があれば、その内容と時期 |
| 数字の背景 | 前年や前期と比べて動いた項目について、その理由を短く |
| 先の予定 | すでに決まっている受注、入金、支払いの予定 |
| 打っている手 | 見直しや交渉など、現在進めている取り組み |
形式は問われません。A4一枚のメモで十分です。相手が上席や審査部門に説明するときに、そのまま使える材料になっているかという視点で作ると、伝わり方が変わります。担当者は、社内で会社の代わりに説明する立場でもあるためです。
なお、毎月の試算表がそもそも出来上がっていない場合は、それ自体を先に整えるほうが優先です。求められてから慌てて作ると、精度の低い資料を出すことになりかねません。
試算表の提出は、監視されるための手続きというより、こちらの状況を伝える機会でもあります。どこを見られているのかが分かっていれば、身構える必要のある場面はそれほど多くありません。
銀行に提出を求められたら資料は提供すべきです。
赤字だとしてもしっかりと理由を説明し、決算時には黒字化するもしくは来期に向けて費用が先行している等の計画的な赤字であれば大きくネガティブに働きません。銀行との付き合いの中で重要なのは信頼関係です。こちらからオープンな環境を作っていることは非常に大切なことです。
銀行も融資できる先や、良い提案ができないかと検討していることが良くあります。
支店長や上司からの依頼の場合も大いにあり得る為、良い関係を構築していくうえでも提出をしていくべきだと思います。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の対応の可否や結果を保証・推奨するものではありません。提出義務の有無は、実際に締結した金銭消費貸借契約書・約定書・取引約定書の条項によって異なります。ご自身の契約内容については、契約書の原本および取引金融機関の担当者、専門家にご確認ください。