賃上げ促進税制には、中小企業向けに控除しきれなかった税額を翌年度以降へ繰り越す仕組みがあります。赤字の年に税額控除を使えない場合でも検討の余地がありますが、賃上げ額がそのまま現金で返ってくる制度ではありません。
制度は改正されるため、事業年度の開始日と適用される資料を先に確認します。過年度の控除率や上乗せ条件を、そのまま今年度に使わないことが大切です。中小企業の判定、青色申告、国内雇用者の範囲、給与等の比較方法にも条件があります。
中小企業向けの制度では5年間の繰越控除が設けられています。繰り越す額の計算と明細、申告の要件を税理士等と確認します。赤字だから申告時に何もしておかなくてよい、と考えると、後で利用できないおそれがあります。
繰越税額は将来の税額から無条件に引けるわけではありません。利用する年度の給与等の増加に関する条件、税額に対する限度、残額と期限を確認します。途中のすべての年度で同じ率の賃上げを続けなければならない、という意味に読み替えないようにします。
給与の増加は資金流出を伴い、関連する負担も変わります。税額控除の利用が後年度になるなら、その間の資金は別に必要です。全国調査の賃上げ割合や最低賃金の平均から自社の負担を決めず、自社の給与、利益見通し、納税見通しを並べて検討します。
財務省の2026年度税制改正の解説では、教育訓練費増加に伴う上乗せ措置の廃止が示されています。中小企業向けの制度が継続されることと、すべての上乗せ条件が従来どおり残ることは別です。中小企業庁の案内では、法人の教育訓練費上乗せの旧条件は2024年4月1日から2026年3月31日までに開始する事業年度が対象です。2026年4月1日以降に開始する事業年度と混同しないようにします。個人事業主は所得年で区分され、旧条件の対象は2025年・2026年です。事業年度に対応するガイドで、利用できる条件を確認します。
情報確認日:2026年10月3日。
業績が改善していない中でも、人材確保や最低賃金への対応から賃上げを迫られる中小企業が増えている点は重要だと思います。
賃上げは毎月の固定費を増やすため、まずは価格転嫁や生産性向上によって増加分を吸収できるか、資金繰りまで含めて検討する必要があります。
賃上げの判断を税制ありきでするのではなく、経営上必要な賃上げを行ったうえで、将来の税負担軽減につながる制度を確実に活用するという順番が大切だと感じます。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、税額控除の適用を保証・推奨するものではありません。税制の適用にあたっては事業年度・要件により取扱いが異なります。実際のご検討にあたっては、顧問税理士および国税庁・中小企業庁の最新の資料を必ずご確認ください。記載は2026年9月時点の内容です。