事業承継では、経営を担う人の交代と、株式・事業用資産の移転を分けて考えます。親族か社員かだけで、費用を負担する側が逆になるわけではありません。贈与・相続・売買など、移し方によって税金や代金を負担する人が変わります。
親が子へ株式を贈与する場合、原則として贈与税を申告・納付するのは株式を受け取った側です。相続税も財産を取得した人の側で検討します。親族承継の贈与税・相続税を「渡す側の負担」とする説明は正確ではありません。売買なら、買う側の取得資金と、売る側の譲渡所得等を分けます。
税務上の非上場株式評価と、売買で合意する価格は同じとは限りません。持株割合、評価方法、会社の財産や利益を専門家と確認します。従業員への承継も売買だけに限られず、無償・低額の移転には税務上の論点があります。
株式の集中と遺留分等の問題は、財産の全体像と移転方法によって生じます。従業員へ継ぐから相続人との調整は不要、と決めつけないようにします。民法特例を利用する場合も、合意する人、行政への確認、家庭裁判所の許可等の条件と期限を専門家に確認します。
前経営者の退職金や、承継後の設備・運転資金は会社側の資金繰りに関わります。役員退職金は好きな額を損金にできるものではありません。株式代金、税金、退職金、借入返済を、誰の口座からいつ出るかで一覧にします。
事業承継税制は納税猶予等の制度であり、すべての税が無条件で免除される仕組みではありません。承継計画、認定、申告、継続届出などを確認します。融資・保証も利用主体と資金使途ごとに審査があります。前経営者の保証が代表交代で自動解除されるわけではないため、承継前から金融機関と話し合います。
情報確認日:2026年10月3日。
「番頭に継いでもらおうと思っている」という話は、たいてい途中で止まる。止まる場所も決まっていて、株の買取資金だ。
三十年働いてくれた人が、数千万円の株式を買えるかというと、買えない。そこで話が終わってしまう会社を、何社も見てきた。
ところが、後継者個人が借りられる公的な制度があることは、あまり知られていない。会社が借りるのではなく、個人が借りる。しかも資金使途に株式の取得資金がはっきり書いてある。これを知っているかどうかで、選択肢の数が変わる。
もうひとつ、親族承継の側でよく起きるのが、遺留分の話が最後に出てくることだ。株の話と税金の話が片付いたころに、「そういえば妹はどうなるんだ」となる。この順番だと、まとまる話もまとまらない。
民法特例には、合意から1か月、確認から1か月という短い期限が入っている。合意ができてから調べ始めると、まず間に合わない。だから私は、株の評価額が出た段階で、他の相続人の顔ぶれを先に聞くようにしている。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務判断・法律判断を行うものではありません。制度の内容、限度額、期限は改正されることがあります。実際のご判断は、顧問税理士・弁護士、都道府県の担当窓口、取引金融機関、信用保証協会にご確認ください。
【参考】中小企業庁「事業承継税制(法人版・個人版)」/国税庁 タックスアンサー No.4148・No.4638/法務省「民法(相続法)改正」/中小企業庁「経営承継円滑化法 申請マニュアル(金融支援)」「民法特例」/日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」/全国信用保証協会連合会「事業承継特別保証制度」/全国銀行協会「経営者保証に関するガイドラインの特則」/中小企業基盤整備機構 令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センター実績(2026年5月29日公表)